ブラウスの胸元や袖口に、小さなひだが並んでいる。遠くからは細かな模様に見えるのに、近づくと糸が布の山をつないでいる。そんな立体的な刺繍を見かけたら、「スモッキング」という名前を思い出してみてください。
これは、布を寄せた部分に縫い目を渡す技法です。装飾を足すだけでなく、布の分量をまとめながら、動きに応じる余地もつくる。その仕組みを知ると、服の小さな一部分が少し違って見えてきます。
模様の中に、動くための工夫がある
ASU FIDM Museumは、スモッキングを、寄せた布に縫い目を渡すことで、もともと伸びにくい衣服にも伸縮する余地を生む技法として説明しています。英国の農村で働く人々が着たスモックには、こうした実用性と装飾性がありました。[1]
伸びる糸そのものだけに頼るのではなく、寄せた布の形を利用する。ここで面白いのは、糸だけ、布だけを見ても全体の働きは分からないことです。縫い目がどこをつないでいるのか。ひだの山と谷はどちらへ続くのか。二つを一緒に追うと、模様が構造にもなっていることに気づきます。
ただし、現代の服にある細かいギャザーが、すべてこの技法とは限りません。ゴム糸を使った仕立てもあります。見た目が似ているからといって同じものだと決めず、製品の説明があれば確かめると、観察の楽しみが増します。
働く日の服から、晴れの日の一着へ
同館は、1870年代以降、スモックやスモッキングが流行の衣服にも取り入れられたと紹介しています。所蔵する1893〜97年頃の少女用の絹のドレスにも、その装飾が使われています。[1]
一方、Museum Walesの所蔵品には、1850年代、ロバート・トラウトの結婚式のために作られた白いリネンのシャツがあります。袖の上部と袖口にスモッキングがあり、前面には白糸でハートや様式化したシダが刺繍されています。[2]
仕事着、子どもの装い、結婚式の服。同じ言葉の周りに、異なる場面が並びます。「素朴な服」「かわいい服」という一つの印象だけで見るより、誰が、どんな日に着るためのものだったかを知ると、一着の表情が豊かになります。
今日は、袖口だけ見てみる
手持ちの服にスモッキングがなくても、この見方は使えます。今日着るシャツの袖口を、表と裏から一度眺めてみる。布をまとめているのは縫い目なのか、折り目なのか。飾りだと思っていた部分に、形を保つ役割があるかもしれません。
確かめるために強く引っ張ったり、古い衣服を無理に広げたりする必要はありません。目で追える範囲だけで十分です。繊細な布のお手入れは、見た目から判断せず、その服の洗濯表示に従います。
いつもの一着を、新しく買った服のように見直す。髪を整えたあと、袖口の小さな仕事にも目を留める。そんな身支度の日があってもよさそうです。
縫い目ではなく折り目がつくる動きについては、プリーツの服は、歩くと表情が変わる|折り目に隠れた小さな余白で紹介しています。
参考資料
[1]ASU FIDM Museum:Smocked frock。技法の働きと服飾への展開、所蔵ドレスの説明を参照。
[2]Amgueddfa Cymru – Museum Wales:Smock、資料番号 F84.204。年代・持ち主・用途・素材・刺繍の説明を参照。
編集:KIWABIヘアケア編集部