動画を見慣れた今でも、「紙の絵が動く」と聞くと、少し見たくなりませんか。ゾートロープは、内側に絵を並べた筒を回し、側面の細いすき間からのぞく光学玩具です。止まった絵の連なりが、動いているように見えます。
大きな画面も音もなく、見る場所を少し変えることで始まる、小さな映像の楽しみ。博物館の資料から、その入口をたどってみましょう。
上から眺めるのと、すき間からのぞくのは違う
英国Science Museum Groupの所蔵品解説では、複数の人が筒のすき間を通して同時に絵の動きを楽しめることが、ゾートロープの特徴として紹介されています。所蔵する1870年の一例には、絵の帯48本と台が付属しています。[1]
ポイントは、単に絵を速く回すことではなく、すき間越しに見ることです。米国の科学館Exploratoriumの展示解説でも、筒のすき間から絵を見て装置を回す方法が案内されています。[2]
ここでは、見る人も仕組みの一部になります。どこに立ち、どこからのぞくか。その小さな違いで、同じ装置との付き合い方が変わるのです。
回す前の一枚ずつにも、見どころがある
もし展示で静止した絵の帯を見る機会があれば、隣り合う絵を比べてみてください。腕の位置、足の開き、形の傾き。同じように見える絵の、どこが少しずつ変わっているでしょうか。
一枚の絵の上手さだけでなく、絵と絵の間にある変化を見る。それは、出来上がった動画を見るときには通り過ぎてしまう部分かもしれません。動きを止めて眺めることで、動きが生まれる手前の工夫に目を向けられます。
名前や発明年を全部覚えなくても、「すき間から見る」「隣の絵と比べる」という二つの見方があれば、出会ったときの楽しみは十分増えます。
小さな違いを見つける時間
実物が手元になくても、紙の隅に丸を三つ描いて、それぞれの位置を少しずつずらしてみると、途中の動きを想像できます。これだけでゾートロープになるわけではありませんが、「動きの前に、一枚ずつの違いがある」と考えるきっかけにはなります。
完成品を作る必要も、うまく描く必要もありません。三つ描いたところで終わりにしてもいい。何かの役に立てようと急がず、小さな仕組みを面白がる時間です。
展示で体験できる場合は、触れてよい場所や回し方の案内に従いましょう。古い所蔵品は、見学だけのこともあります。動く絵を見たあとに、もう一度止まった絵へ目を戻す。その往復にも、ささやかな発見が待っています。
一枚ごとの違いを味わうもう一つの入口は、一枚だけの版画を眺める|モノタイプと、偶然を残す楽しみで紹介しています。
参考資料
[1]Science Museum Group:Zoetrope、資料番号1934-302。構造、所蔵品年代・付属品を参照。[2]Exploratorium:Zoetrope。すき間から絵を見る展示の説明を参照。
編集:KIWABIヘアケア編集部