古い家具の表面に、花や葉の模様がある。絵の具で描いたように見えたそれが、実は木の組み合わせだと知ると、もう一度近くから見たくなります。
異なる色の薄い木を組み合わせて家具の表面を飾る技法に、マルケトリーがあります。英国のV&Aも、色の違う木の薄板を家具の表面に配する技法として紹介しています。[1]色を塗るのとは違う「描き方」を、今日は少し眺めてみましょう。
花びらの中にも、木目がある
メトロポリタン美術館には、1760年頃にベルナール2世・ファン・リーゼンブルフが作った小さな作業・筆記用テーブルがあります。同館によると、天板には薄い木材を使った花のマルケトリーが施されています。[2]
写真を見るときは、まず花の輪郭だけを探してみます。次に、その内側の細い線へ。描かれた花の形と、材料としての木の模様を別々に見るつもりで眺めると、小さな面にも二つの表情があることに気づけます。
「何の木か」をすべて当てる必要はありません。明るい部分と暗い部分がどう隣り合うか、線がどちらへ向いているか。名前より先に見えるものを一つ拾えば、十分楽しめます。
きれいな表面の下に、使うための空間
このテーブルの天板は後ろ側の蝶番で開き、中は三つの区画に分かれています。さらに美術館の解説は、天板の手前側の金属の縁が、使う人が書き物をしやすいよう滑らかに整えられていることも伝えています。[2]
花を眺めるときと、机として使うとき。その両方が、一つの家具の中で考えられていたのでしょう。華やかな飾りを、ただ「ぜいたくなもの」で片づけず、手が触れる縁や、物をしまう場所にも目を向けると、別の工夫が見つかります。
家では、模様の一角だけを見直す
身の回りの木のトレーや箱にも、色の濃淡や線の流れがあります。ただし、見た目だけで木の種類や技法は判断できません。印刷された模様や仕上げもあるので、「これはマルケトリーだ」と決めつける必要はないのです。
コーヒーを置く前に、机の一角を一度眺める。線がまっすぐ続くところ、曲がるところ、色が少し変わるところ。そこに何かの形を見つけても、見つからなくてもかまいません。
旅先の美術館で覚えた見方を、いつもの部屋へ持ち帰る。新しい物を増やさず、すでにあるものの表情が増える。そんな楽しみ方も、暮らしにはよく似合います。
木の「面」と対照的な「線」の工夫は、木の線で、光を編む|組子の模様を眺める小さな休憩で紹介しています。
参考資料
[1]Victoria and Albert Museum:The Baroque style(Marvellous materials節)。[2]The Metropolitan Museum of Art:Work and writing table (table en chiffonière)、資料番号1984.471.2。技法、作品年代、構造と使い勝手の説明を参照。
編集:KIWABIヘアケア編集部