白い板に、うっすら凹凸がある。それだけに見えたものを後ろから照らすと、細かな景色が現れる。リトファンは、そんな「見え方の変化」を楽しめる工芸です。
米国のBlair Museum of Lithophanesは、リトファンを、背後から光を当てることで細かな像が現れる、半透明の磁器の立体的な板と説明しています。ヨーロッパでは1820年代に作られ始めたといいます。[1]平面に描く絵とは少し違う、素材と光の出会いです。
表面に当たる光ではなく、通ってくる光
リトファンの面白さは、光が絵を見るための補助にとどまらないことです。磁器の厚みの違いを光が通ることで像が現れる仕組みは、Museum of Jurassic Technologyが販売する磁器のリトファンの説明でも確認できます。[2]
白いものなら、何でも同じように見えるわけではありません。ここでは色を塗った線を読むのではなく、素材を通った光の濃淡を見ています。「白い板」と「そこに見える絵」の両方を思い浮かべると、一つの物の見方が切り替わる感覚を味わえます。
窓辺や照明にも、絵の居場所があった
Blair Museumのコレクション解説には、窓に掛ける板、ランプシェード、常夜灯など、さまざまな形のリトファンが紹介されています。[3]壁に一枚の絵を掛けるのとは違い、光のある場所と一緒に楽しむものだったことがうかがえます。
大きな物語を描いた作品だけでなく、暮らしの中で光を見るための小さな道具にも、美術の楽しみはあります。何が描かれているかを確かめたあと、「どこに置いて見るものだったのだろう」と考えると、鑑賞の入口が一つ増えます。
自宅で無理に再現しなくてもいい
この仕組みを知ったからといって、手持ちの器を熱い照明に近づけたり、窓辺の不安定な場所に置いたりする必要はありません。古い品や用途の分からないものを、実験のために使うのも避けましょう。
まずは資料の写真で、表面の凹凸と、光が通ったときの絵を眺めるだけで十分です。美術館で実物に出会ったら、展示の照明や見る位置も含めて楽しむ。触れる、持ち上げる、撮影用ライトを当てるといった行為は、館の案内に従います。
「何色だろう」だけでなく、「どこから光が来ているのだろう」。その問いを一つ覚えておくと、いつもの白いものにも違う表情が見えてくるかもしれません。知識をたくさん集めるより、見方が一つ増える。そんな短い休憩のお話です。
同じ白でも、紙の繊維が見せる表情は、白い紙を、光にかざす|本美濃紙から知る、何も書かない楽しみで紹介しています。
参考資料
[1]Blair Museum of Lithophanes:About。定義と成立時期を参照。[2]Museum of Jurassic Technology Gift Shop:Tula Tea Room Lithophane。厚みと透過光による像の説明を参照。[3]Blair Museum of Lithophanes:Collection。用途・形式の例を参照。
編集:KIWABIヘアケア編集部