「白髪に関わる遺伝子が見つかった」。そんな見出しを読むと、親と同じ時期に白髪になるのだろうか、検査すれば何歳で増えるか分かるのだろうか、と気になるかもしれません。
IRF4という遺伝子にある特定の違いと白髪との関連は報告されています。ただし、その違い一つで、あなたの白髪が始まる年齢や将来の量が決まるという意味ではありません。「遺伝子がある・ない」という二択とも違います。
調べたのは、遺伝子の中の特定の違い
2016年の研究では、ラテンアメリカの6,000人以上を対象に、髪などの特徴とDNAの違いを調べました。白髪と統計的な関連が見つかったのが、IRF4内の「rs12203592」と呼ばれる位置の違いです。[1]
ここで大切なのは、「白髪になる人だけがIRF4を持っている」という話ではないこと。研究が比べているのは遺伝子の有無ではなく、その中の特定の位置の違いです。名称が難しくても、「どの違いを比べたのか」が分かると、見出しの意味が少し具体的になります。
研究した集団と、自分は同じではない
2020年のポーランドの研究でも、この位置の違いと白髪との関連が確認されました。一方で、白髪の予測には年齢が大きく関わり、遺伝情報を加えることで得られる改善には限界がありました。[2]
この二つの研究は、すべての日本人について、何歳で何本の白髪が生えるかを確定したものではありません。調べた集団、白髪の評価方法、予測したい内容が変われば、同じ数字をそのまま使うことはできません。
検査結果は、白髪の予定表ではない
集団で関連を見つけることと、一人の将来を言い当てることは別です。「関連する違いがある」から必ず同じ経過になるとも、「その違いがない」から白髪にならないとも、この研究からは言えません。
遺伝子に関する情報やサービスを見るときは、「何を予測するのか」「どの集団で確かめたのか」「分からない範囲は何か」を確認してください。研究論文の紹介があることだけで、その検査や商品が自分に役立つと判断しないことも大切です。
また、この二つの研究は、市販のシャンプーやサプリメントでIRF4の働きを調整し、白髪を改善できると示した試験ではありません。遺伝子名を、商品の効能の証拠に置き換えないようにしましょう。
今のお手入れは、今の希望から
親の髪色に似ていると感じても、それを将来の予定表にする必要はありません。今、白髪をカバーしたいのか、そのまま整えたいのか。日常のお手入れは、目の前の髪と自分の希望から選べます。
「遺伝だから何をしても無駄」とも、「生活を完璧にすれば変えられる」とも決めつけずに。研究は自分を採点するためではなく、極端な言葉から距離を取る手がかりとして読むと、付き合いやすくなります。
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参考資料
- Adhikari K, et al. A genome-wide association scan in admixed Latin Americans identifies loci influencing facial and scalp hair features. Nature Communications. 2016;7:10815. doi:10.1038/ncomms10815.
- Pośpiech E, et al. Exploring the possibility of predicting human head hair greying from DNA using whole-exome and targeted NGS data. BMC Genomics. 2020;21:538. doi:10.1186/s12864-020-06926-y.
本記事は研究の内容と限界を紹介するもので、遺伝子検査・治療・特定商品の効果を推奨するものではありません。編集:KIWABIヘアケア編集部