腰に下げた、小さな道具箱|シャトレーヌから考える持ち物の居場所

バッグの中で鍵が見つからず、指先で底を探す。身支度の最後に、いつもの小物が見当たらない。そんな朝、昔の人は小さな道具をどこに置いていたのだろう、と考えてみるのも面白いかもしれません。

答えの一つが、腰につける装身具「シャトレーヌ」です。飾りの先から鎖が何本も下がり、その先には実際に使う道具。宝飾品のようでいて、手元の仕事にも寄り添う品でした。

鎖の先を見ると、飾りが道具に変わる

メトロポリタン美術館は、シャトレーヌを、使いたい小物を取り付けて腰に着ける装飾的な留め具と説明しています。[1]英国のRoyal Museums Greenwichが所蔵する一例には、指ぬき入れ、針山、ケース入りのはさみなどが、鎖で下げられています。[2]

最初は全体の輪郭を見て、次に一本の鎖を端まで目でたどる。そうすると「きれいな飾り」という印象が、「何に使う道具だろう」という問いへ変わります。鎖は模様であると同時に、小物と持ち主をつなぐ仕組みでもあったのです。

書くための道具も、身につけていた

メトロポリタン美術館にある1765〜70年頃の英国製の例では、小さな携帯用ケースの中に、はさみなどの道具が収められています。その中には、メモを記すための象牙製の板二枚と、鉛筆ホルダーもあります。[1]

何が書かれたのかを、ここから決めつけることはできません。それでも、書くためのものが装身具に組み込まれていると知るだけで、見方は変わります。装うことと用事をこなすことは、いつも別々ではなかった。小さな形の中に、その日の暮らしを収めようとした工夫が見えてきます。

増やすより、いつもの一つの居場所を決める

現代の暮らしで、同じものを買ったり、道具を腰につけたりする必要はありません。受け取ってみたいのは、「すぐ手が届く場所に、必要なものを置く」という発想です。

たとえば外出用の小さなコームは、バッグの決まった内ポケットへ。よく使うヘアクリップは、洗面台の広い面に散らす代わりに、小さな受け皿へ。新しい収納用品をそろえなくても、今あるものの居場所を一つ決めるだけで十分です。

もちろん、すべてを身近に集めればよいわけではありません。はさみなどは安全に保管し、使う人や場所に合う置き方を選びます。歴史の道具から借りるのは形そのものではなく、自分に必要なものを考えるきっかけです。

次に古い装身具を見るときは、輝きだけでなく、何がぶら下がっているかにも目を向けてみてください。持ち物の先から、知らない誰かの一日を想像する。そんな短い寄り道も、身支度を少し楽しくしてくれます。

身につける収納の別の形は、ポケットは、服から外せた|腰に結ぶ小さな袋から知る装いの歴史で紹介しています。

参考資料

[1]The Metropolitan Museum of Art:Nécessaire and châtelaine、資料番号24.80.61a–k。用途・年代・付属品を参照。[2]Royal Museums Greenwich:Chatelaine、資料番号JEW0374。鎖に下げられた道具の説明を参照。

編集:KIWABIヘアケア編集部

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