ボブとクロッシェ帽がつくった横顔|1920年代の装いをたどる

ボブとクロッシェ帽の輪郭を描いた編集用イメージ
編集用イメージ。1920年代の装いに着想を得た架空の人物で、所蔵品や当時の写真ではありません

目深にかぶった小ぶりの帽子と、その下に収まる短い髪。1920年代の装いを思い浮かべるとき、ボブとクロッシェ帽は、ひとつの横顔として記憶されているかもしれません。

その組み合わせには、流行する形だけでなく、髪を切ることへの当時のまなざしも重なっています。帽子が髪型に近づき、髪型が帽子の輪郭を支えた時代を、博物館に残る品々からたどります。

飾りを重ねるより、頭に沿う形へ

米国のASU FIDM Museumが紹介する1925年頃のクロッシェ帽には、正面に幾何学的に配したリボンがあります。立体的な飾りを大きく張り出させるよりも、帽子の形に沿わせる工夫です。同館は、1920年代の前半にはすっきりした釣り鐘状の形が見られ、後半へ向かって柔らかい輪郭も登場したと説明しています。[1]

帽子の大きさだけを見ると控えめでも、顔のすぐ近くに線が来ることで、つばの角度や折り返しが目に留まります。たくさん飾ることと、印象に残ることは、必ずしも同じではない。小さな輪郭にも装いの工夫があると感じられます。

短い髪だから収まる輪郭

頭に近く沿う帽子には、髪を収める空間の問題があります。FIDM Museumの解説では、大きく結い上げた長い髪は、ぴったりしたクロッシェ帽に収まりにくく、短いボブとの相性が重要でした。髪型と帽子が、それぞれ単独で完結していたわけではないのです。[2]

ボブにもさまざまな形が広がりました。英国のChertsey Museumは、1926~1928年頃の短い形の帽子について、当時流行したシングルやイートン・クロップといった、特に短い髪型に合うものと説明しています。「1920年代のボブ」とまとめられがちな髪も、帽子と一緒に見ると長さや輪郭の違いが見えてきます。[3]

緑のキルティング、夏の麦わら

FIDM Museumの別の1925年頃の一品は、緑のキルティングのクロッシェ帽です。折り返した明るい緑のつばと、周囲に配された濃い緑の丸い飾りが特徴。内側は黒い絹サテンですが、ラベルが残っていないため、作り手や製作地は分かっていません。[2]

一方、Chertsey Museumの資料には、青いサテンリボンと木綿の花をあしらった黒い麦わらの帽子や、淡い黄色の麦わらを使う夏用の帽子があります。写真や映画で見慣れた一色のイメージより、実際の装いには素材や季節の違いがあったことが伝わります。[3]

同じ小ぶりの帽子でも、表面を縫い目で飾るか、つばに色の差を付けるか、花を一つ添えるか。髪との関係を見る途中で、作り手がどこに変化を付けたかにも気付きます。

髪を切ることが、話題になった理由

ボブの広がりは、歓迎ばかりを受けたわけではありません。FIDM Museumは、長い髪が女性らしさや社会的な尊重と結び付けられていたため、短髪が強い批判の対象になったことを紹介しています。同館はその反応を、女性の役割が変化することへの不安とも結び付けて説明しています。[1]

帽子の下の数センチの髪が、その人の生き方まで評する材料にされていた。そう知ってから眺めると、すっきりした横顔の印象にも、少し別の奥行きが生まれます。ただし、同じ髪型の人が皆、同じ思いや理由で選んだと決めることはできません。

今の装いに持ち帰るなら、当時の姿をそのまま再現しなくてもよいでしょう。帽子をかぶったとき、顔の横にどのくらい髪が見えるか。その小さな関係を楽しむ入口として、ベレー帽と前髪の合わせ方も参考になります。

ボブとクロッシェ帽の歴史は、髪と小物を一緒に選ぶ面白さを教えてくれます。そして、その形を自分で選べることにも、ささやかな意味があると感じさせてくれます。

参考情報

  1. ASU FIDM Museum:1920s cloche(資料番号91.789.3)
  2. ASU FIDM Museum:Quilted cloche, c. 1925(資料番号81.25.6)
  3. Chertsey Museum:The Roaring Twenties exhibition catalogue

編集:KIWABIヘアケア編集部/資料確認:2026年10月11日。歴史的な説明は各所蔵館の公開資料に基づきます。

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