埴輪の顔の横にあるのは、髪?|美豆良から見る古代の装い

埴輪の顔の横に、耳とは違う大きなふくらみが付いている。それは「美豆良(みずら)」という、髪を左右で束ねた髪型の表現かもしれません。丸い目や口につい目が向く埴輪も、髪から見始めると、装いの細部を残した人物像として近づいてきます。

顔の両脇で束ねた髪を、土で表す

東京国立博物館の「埴輪 踊る人々」は、埼玉県熊谷市の野原古墳から出土した、6世紀の埴輪です。同館の解説では、小さい方の埴輪は腰に鎌を着け、顔の両脇で髪を結って束ねる、当時の男子の髪型である美豆良を表しているとされています。[1]

髪の一本一本を描かなくても、束ねる位置と外へ張り出す形で髪型が伝わる。これは、実際の髪をそのまま写すのとは違う、土ならではの表し方です。写真を見るときは、まず頭の輪郭を追い、次に左右のふくらみと顔の位置関係を見てみてください。「何となく人の形」だったものに、身支度の跡が見えてきます。

古代の髪型は、一つではない

別の髪のまとめ方も残っています。宮内庁が紹介する仁徳天皇陵出土の「埴輪女子頭部」は、長い髪を前後で折り返して束ねた、島田髷に似る髪型をしています。同庁はこの表現などから、巫女のような性格の女性であろうと考えられると説明しています。[2]

ここで大切なのは「島田髷に似る」という比較です。後世の髪型と似た形が見えることと、同じ名称や結い方が当時も存在したと確定することは違います。呼び名を急いで当てはめず、左右へまとめるのか、前後へ折り返すのかという形の違いから眺めると、資料の説明を読み取りやすくなります。

現代でも、分ける場所や束ねる位置で横顔は変わります。古代の髪型を再現しなくても、髪が人物の輪郭をつくるという点には、今の身支度と通じる面白さがあります。

髪型は手がかり。答えを急がず全体へ戻る

ただし、髪だけですべてが分かるわけではありません。「踊る人々」の大きい方について、東京国立博物館は性別が明確でないことを説明しています。また、踊る姿ではなく、馬の手綱を引く馬子を表すという見方も紹介しています。親しまれた作品名も、解釈を一つに固定する答えではないのです。[1]

髪に気づいたら、手の向き、腰に付いたもの、衣服の表現へ視線を広げてみましょう。一つの特徴を見つけ、解説を読み、全体へ戻る。その往復なら、予備知識が多くなくても楽しめます。

埴輪の前で、今日は顔の横から見てみる。そんな小さな入口の変化が、古い土の人物に残された装いを、ぐっと身近にしてくれそうです。

参考資料・編集
[1]東京国立博物館「『埴輪 踊る人々』・『見返り美人図』について」。[2]宮内庁「埴輪女子頭部」。
編集:KIWABIヘアケア編集部。資料確認:2026年10月30日。資料の解説と、編集部による鑑賞の提案を分けて記しています。

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