昔から、赤毛の人たちは「ビッグ・レッド」や「錆つき」や「化け物」などと差別されたり、ギリシャ神話では死後吸血鬼になると言われたりしてきました。信じがたいことですが、赤毛だという理由で、長い間差別を受けていたことも事実です。
また、赤毛と言えば、「赤毛のアン」が有名ですが、じつは赤毛のアンもひどい差別を受けています。
そこでこの記事では、赤毛の歴史についてご紹介したいと思います。
1.赤毛の人は死後吸血鬼になると信じられていたのは事実

11世紀のヨーロッパでは、変わった見た目(例えば、赤毛、左右の目の色が違う、唇が裂けているなど)で生まれた子どもは、死後に吸血鬼になると信じられていました。また、ポーランドでは、大網膜(誕生時に新生児の顔を覆っている膜)がついたまま生まれた赤ちゃんは必ず吸血鬼になるといたのです。
さらに、ルーマニアで伝承される吸血鬼は、赤毛で青い目をしており、心臓が二つあるという話が語り継がれています。
このような、赤毛に関するマイナスのイメージが語り継がれているのには、キリストを裏切ったユダ、アベルを殺したカインが赤毛だったので、赤毛には裏切り者が多いと伝えられているからです。
ただし、赤毛に対する差別は昔の神話などだけではありません。差別問題は実話であり、15世紀のドイツでは、赤髪は魔女と見なされ、45000人もの人たちが拷問にかけられ、殺されたと言います。さらに、エジプトでは生きたまま焼かれたり、ギリシャでは赤毛の人々が死んだ後に吸血鬼になると考えられており、ひどい差別に長年悩まされていたそうです。
2.赤毛の人口

赤毛の人は、スコットランドやアイルランドで比較的多く見られますが、その数は極めて少なく、世界人口の約1%~2%と言われています。
さらに、この数字は減少し続け、2060年には絶滅する恐れがあると言われており、とても希少な存在です。ちなみに世界で一番赤毛の人口が多いのはスコットランド、2番目に多いのはアイルランドと言われています。
また、赤毛は北欧のイメージが強いと思いますが、じつはアジアなどでも希に見かけます。アジアでは、アラブ人やイラン人、モンゴル人などの人々の一部に赤毛が存在しているのです。
3.赤毛が生える原因
赤毛は、世界の人口の1〜2%で見られ、北ヨーロッパまたは北西ヨーロッパ系の祖先を持つ人々の間では頻度が高く現れています。これは、MC1Rタンパク質の変化したバージョンを生成する16番染色体上の劣性対立遺伝子がホモ接合の個人に最も一般的です。
赤毛は、一言に赤毛と言ってもその色合いはさまざまで、濃いバーガンディや明るい銅色、赤褐色から、バーントオレンジや赤橙色からストロベリーブロンドなどがあります。その違いは、赤みを帯びた色素はフェオメラニンが多く、濃い色素はユーメラニンが比較的少ないことが特徴です。
髪の毛以外の特徴としては、肌の色が白く、目の色が薄く、そばかすや、紫外線に対する感受性が高いとされています。
4.赤毛で差別のない世界に

赤毛だからと言って、差別はもちろんあってはならないことです。近年、世界の各地で美しい赤毛で差別のない繋がりをと、さまざまなお祭りなどが開催されています。
オランダでは年に一度、世界中から赤毛の参加者が集まる赤毛の日という祭りが開催されています。この祭りは、オランダ南東部の都市ブレダで開催されていましたが、2019年にはティルブルフに移転しました。
80か国以上から参加者が集まるこの国際的なイベントは、2005年にオランダの画家バート・ルーウェンホルスト (Bart Rouwenhorst)が15人の赤毛を描きたいと言ったことから始まっています。
またアイルランドでは、2011年から8月下旬にコーク県で開催されたアイルランド赤毛大会が開催されています。世界的な祝賀行事であり、さまざまな国や人々を魅了しているのが特徴の大会です。
大会では、生姜のキングとクイーンの戴冠、最高の赤眉とそばかすの平方インチあたりのコンテスト、オーケストラコンサート、ニンジン投げ大会などがあり、とても盛り上がります。
ロンドンでは、2013年以降、赤毛であることへの誇りを持ってもらうことを目的として、イギリスいじめ対策同盟が小さな赤毛の日の祭典を開催しています。
2015年になると、アメリカで最初の赤毛のフェスティバルが開催されました。イリノイ州ハイウッドで開催されたRed head Daysは、全米から参加者を集めて盛り上がっています。
このように、赤毛に対する偏見をなくそうと世界各地でさまざまなイベントなどで盛り上げようと取り組みが行われているのです。
5.まとめ
古代ローマでは、赤毛は死語吸血鬼になると信じられていました。しかし、それは迷信であり、もちろん現在でそのようなことはありません。
昔からの言い伝えなどでマイナスのイメージが付いてしまった赤毛ですが、実際目にするととてもきれいで、むしろ憧れの髪色の一つと考えられています。実際、有名な海外の女優もわざわざ赤毛にカラーをする人がいるほどです。
日本ではあまり見かけない赤毛ですが、どのような髪色であっても髪をきれいに保とうとする心は世界共通と言えます。
【本記事の要約】 赤毛は世界的に珍しい髪の色で、特にスコットランドやアイルランドで見られます。赤毛の人々は、歴史的に差別を受けてきました。例えば、11世紀のヨーロッパでは赤毛の人々が死後吸血鬼になると信じられており、またドイツやギリシャでは魔女や吸血鬼として扱われました。赤毛に対する偏見は古くから続いていましたが、現在では赤毛は美しい髪色として憧れの対象となり、赤毛の人々のイベントや祭りも世界各地で開催されています。例えば、オランダやアイルランドでは赤毛を祝うための祭りが行われ、赤毛に対する差別をなくすための活動が続いています。赤毛の人口は世界の約1%〜2%程度で、今後さらに減少する可能性がありますが、赤毛を持つ人々は誇りを持って自分の髪色を大切にしています。赤毛が生える原因は遺伝にあり、特に北ヨーロッパ系の人々に多く見られます。現代では、赤毛は美しい個性として評価され、さまざまな文化で尊重されるようになっています。 |