日本人形の髪は昔から伸びると言われているけど実際は?

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一言で「日本人形」と言ってもじつはさまざまな種類があります。その日本人形のなかでも比較的知られている「市松人形」と言えば、黒髪におかっぱ頭の女の子の人形です。
昔から一般的な人形ですが、ネット上などで「市松人形の髪の毛が伸びた」という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。なぜか、市松人形は昔から、「髪が伸びる」「呪われそう」「夜中に歩き回りそう」などと恐れられています。
そもそも日本人形が怖いと恐れられているのはなぜなのでしょうか?今回はその謎に迫ってみたいと思います。

1.日本人形とは


日本人形とは日本人形にはさまざまな種類があり、尾山人形、歌舞伎人形、花嫁人形、童人形、御所人形、連獅子・鏡獅子、能人形、能面などが代表的です。日本人形の起源は平安時代までさかのぼり、発祥は京都だと言われています。
平安時代、京都では生まれた子どもの無病息災を祈り、子供の枕元に天児(形代「かたしろ」として子どものそばに置き、災厄を移し負わせる)という人形を置く慣わしがありました。この天児が日本人形の原形だと言われています。
その後、江戸時代の町人文化の影響を受け、現在よく見かける美しい人形へと見た目が変わってきました。

2.日本人形の代表「市松人形」はなぜ怖がられているのか


日本人形と聞くと、黒髪のおかっぱ頭の女の子を思い浮かべる人もいると思います。このような人形は一般的に「市松人形」と呼ばれているものです。
市松人形は、江戸時代には子供のおもちゃの代表格として存在していました。名前の由来は諸説ありますが、江戸中期の歌舞伎役者・佐野川市松に顔が似ていたからという説と、市松模様の着物を着せて販売されていることが多かったからという説が有名です。また、当時は「市松」という名前の子供が多かったためという説もあります。
その後、70年代に入るとテレビの怪奇特集などで「髪が伸びる市松人形」などが頻繁に紹介されるようになりました。当時、こういった番組を見たことで恐怖感が植え付けられ、その後大人になっても忘れられず、また自分の子どもにも語っているという連鎖が起こり、今も市松人形が怖がられているのではないかと推測できます。

3.髪が伸びると言われているのは本当なのか?


市松人形が怖がられている理由の一つに、「髪が伸びる」ことがあげられます。しかし、髪が伸びると言われている減少はほとんどが下記の理由の場合が多いのです。

<髪が伸びる原因と考えられていること>

    • 製作不良(粗悪品の可能性)
    • 長期収納による、髪の毛のよれ(人でいうと寝ぐせのようなもの)
    • 髪の毛の変色などが理由(長い年月ではあたりまえです。)
近年作られている人形なら「髪が伸びた」の原因は簡単で、答えは「抜けた髪が途中で引っかかっていて、毛先だけ見ると伸びているように見える」ことです。近年の市松人形の髪はほとんどの場合、絹糸や合繊を使用していて、頭のてっぺんに麩糊(ふのり)を使って植え込んでいます。
そのため、人形を可愛がってよく触っていると次第に糊がはがれて髪が数本抜け落ちることがあります。その抜けた髪が途中で引っかかると伸びているように見えてしまうのです。
そして、昔の市松人形で髪が伸びる原因として考えられるのが、江戸時代に作られていた市松人形の髪は、本物の人毛で作られていました。人の髪の毛は抜けてからもしばらくの間はわずかながら伸びることがあるのです。
そのため、当時の人形師は市松人形を作ってからすぐには出荷せず、しばらく手元に置いて髪をわざと少し伸ばし、不揃いになったおかっぱをもう一度切り揃えてから出荷していたそうです。しかし、戦後になると絹糸や合繊を用いるようになり、人の髪の毛を使用して作った人形はほとんど作られなくなっています。
もしも、あきらかに市松人形の髪が伸びたと言われているなら、もしかするとその市松人形は下手な職人が髪を伸ばし切ることをせずに切り揃えてしまい、出荷後に少し伸びたのかもしれません。
ただし、もしもそのようなことがあっても、あきらかに伸びるのがわかるような長さではなく、数ミリ程度だと思います。

4.日本人形は進化している


日本人形は進化している
日本人形は、昔からどうしても怖がられる存在でもありました。それは、日本人の顔や髪を忠実に再現して作られているものが多く、リアルすぎることが逆効果になっていることもあります。
そのため、近年の日本人形はニーズに合わせてさまざまな変化を遂げています。茶色や金色の髪の毛にティアラを付けていたり、つけまつげやアイシャドウでアニメのようなぱっちりの目をしていたり...。
着ている着物も、派手な柄やドレス風の着物の人形もあります。近年の日本人形は、「現代風」に多様化させてさまざまな見た目で選ぶ楽しみも一層増えています。
昔に比べると住宅事情なども異なり、コンパクトサイズの人形が人気を集めています。また、若い世代にも興味を持ってもらうため、金髪やまつげ付きの人形にも力を注いでいる企業が増えました。

5.まとめ


日本人形の歴史は平安時代が起源とされていますが、時代に合わせて進化していることもわかります。昔は、本物の人毛を使って作られていたことにも驚きです。
また、人形の髪の毛も進化を遂げており近年では茶髪や金髪の人形も増えています。それは、現代では若い頃からでも髪を染めたりパーマをあてたりすることが珍しくないからです。
昔のような怖いイメージは少なくなっていると思いますので、機会があれば日本人形に触れてみるのもいいのではないでしょうか。






【本記事の要約】
本記事は、日本人形、特に市松人形がなぜ怖がられているのかを探る内容です。日本人形は、平安時代から続く歴史を持ち、時代と共に進化してきました。市松人形は江戸時代から存在し、主に子供のおもちゃとして親しまれてきましたが、髪が伸びる、呪われるなどの恐怖の対象として描かれることが多いです。その理由として、怪奇特集や都市伝説が影響していると考えられます。髪が伸びる現象には、製作不良や長期間の保管による変化が原因であり、実際に髪が伸びることはほとんどありません。また、現代の日本人形は髪の色やスタイルも多様化しており、現代的なデザインが増えています。これにより、昔のような恐怖感は薄れ、若い世代にも親しまれつつあります。

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