ジーンズの裾を折ると、内側の縫い合わせに細い線が現れることがあります。白い縁の中に赤が一本。ほんのわずかな部分なのに、見つけると何となくうれしくなる細部です。
その「耳」は、セルビッジと呼ばれます。デニム好きの会話ではおなじみでも、名前だけでは何のためのものか分かりにくいかもしれません。身支度の途中、裾をひと折りするところから、布ができるまでの仕事を少しのぞいてみましょう。
布の端が、そのまま見えている
デニムメーカーのカイハラは、素材の解説で、セルビッジを生地の端にできるほつれ止めの部分と説明しています。赤い線が入ったものは「赤耳」。昔ながらのシャトル織機で織るデニムの特徴として紹介されています。
裾で見える細い縁は、単に後から貼りつけた飾りというわけではありません。布を織る工程から続いている端が、服の内側で顔を出しているのです。そう考えると、表からは目立たない縫い合わせにも、作り方の情報があると分かります。
カイハラの生産工程の紹介には、シャトル織機とともに、別の種類の織機も目的に応じて使い分けていることが書かれています。ひと口にデニムと言っても、求める生地によって作り方はさまざま。耳を見つけることを、一本の良し悪しを決める試験にしなくてもよいのです。
手持ちのジーンズに同じような縁が見当たらなくても、そこで観察は終わりません。端はどのように処理されているか。縫い糸は生地と同じ色か、少し明るいか。自分の一本には何があるのかを見てみると、名前を知る前よりも身近に感じられます。
赤だけではない、耳の色
「赤耳」という言葉が印象的なので、赤い線がないとセルビッジではないと思いたくなるかもしれません。けれど、リーバイスが公開する2023年秋冬のMade in Japanコレクションの工程紹介では、白い耳を採用した例が掲載されています。色には別の選択肢もあります。
同じ紹介記事には、耳をそろえて生地を重ね、裁断する手仕事も登場します。完成品ではほんの細い縁ですが、それをきれいに見せるための準備がある。目立たないところまで、服の表情はつながっているのだと感じさせられます。
色を見るときは、線だけを切り離さずに、その周囲も一緒に眺めてみます。濃いインディゴのそばでは白が明るく見え、明るく色落ちした生地ではなじんで見えるかもしれません。細い赤が目に入る日もあれば、裏側の淡い色のほうが気になる日もあります。
新しい一本を探す場合も、まずは穿き心地や丈、手入れのしやすさを確かめ、そのうえで好きな細部を選ぶくらいが自然です。耳の色をきっかけに店員へ作り方を聞いてみると、商品名だけでは分からなかった話に出会えるかもしれません。
折る幅で、足元の見え方が変わる
手持ちの一本で楽しむなら、鏡の前で裾を一度だけ折ってみます。細く折った場合と、少し幅を持たせた場合。裾の裏の色が見える面積が変わると、足元の印象も変わります。幅に正解を探すより、靴とのつながりを見る小さな実験です。
たとえば、靴の上に生地が少したまる姿を楽しむか、靴の形がよく見える丈にするか。厚く重なってごろつくなら、無理に何度も折らず、元へ戻しても構いません。歩いたときに裾を踏まないこと、足の動きが妨げられないことを先に確かめましょう。
近くで見る楽しみと、全身で見る楽しみは、両方あっていい。耳を見せたくなって折ってみたものの、今日は折らないほうが落ち着く。そんな結論でも、服をよく見た数分は残ります。見せない細部を自分だけが知っているのも、装いの楽しさです。
その日の靴や靴下と合わせて一度決めたら、あとは出かけてしまいましょう。服を楽しむ時間が、細部を気にし続ける時間にならないように。鏡の前の小さな発見が、その日の歩き出しを少し楽しくしてくれれば十分です。
なお、洗濯や縮みへの対応は、セルビッジという名前だけで決めず、手持ちの製品の取扱表示を確認してください。作り方を知ることと、個々の服をどう扱うかは、一本ずつ確かめたいところです。
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文・構成:KIWABIヘアケア編集部。公式資料確認日:2026年10月4日。
画像は、デニムの折り返しと織りの端を題材にしたAI生成のイメージです。特定メーカーの製品写真ではありません。