雨期は誰しも憂鬱なものです。雨が続いて怖いのは、精神のバランスを崩すこと。どんよりとした気分が梅雨明けまで持続し、ゴールデンウィークも相まって、強い落ち込みを招くことです。
ストレスには、「免疫を高める」という言葉がとても魅力的に響きます。人間にはストレスへの抵抗力が備わっていて、免疫力を鍛えることで、病気やトラブルをはねのけられるのではないか、という願望です。
しかし、白髪予防や白髪ケアという観点からみてみると、免疫を高めたり、ストレスから逃避したりするより、交感神経に注目した方が髪に良い、つまり体にも心にもよいというハーバード大学の研究があります。今回はそちらをご紹介し、できてしまった白髪のケアをご紹介します。
実験ではマウスを狭い場所に閉じ込め、突然びっくりするようなストレスを何度も与え、さらには唐辛子カプサイシンと同じような刺激のあるRTXを注射してマウスをいじめます。可哀想ではありますが・・・。
1.免疫の問題かストレスか、それとも・・・?

髪の毛に限らず、爪がボロボロになったり、肌が荒れたりと、ストレスによって体調が目に見えておかしくなるということは、私たちは経験的に知っていますよね。髪・爪・肌は、実は体の中で後まわしにされている部分です。急激なストレスを受けると、まず栄養素が心臓や脳といった、生きるために必須の部分へと優先的に回り、髪・爪・肌は後回しになって、その結果、通常と同じ生活をしていると、栄養が足りなくなってボロボロになります。
イギリスの科学雑誌『Nature』でも、ストレスによって髪の毛の毛包色素幹細胞がダメージを受け、髪の毛の栄養と色素が抜けて白髪になるという科学的な実験結果が報告されているのです。
引用「Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocytestem cells」
白髪の原因は免疫不足ではない
ただ、ストレスが免疫にダメージを与え、その結果として白髪になるかというとそうではないようです。ハーバード大学では、免疫細胞のあるマウスと、免疫細胞を取り除いたマウスで実験し、どちらも同じ強いストレスにさらされると、白髪ができてしまうという実験結果となりました。
残念ながら、食事を改善し、たっぷり運動して良質な睡眠を取って、健康的な生活を送り、免疫を高めたとしても、心にはいいのですが、強いストレスの結果、白髪になるという状態を避けることはできないのです。
白髪の原因はストレスホルモンでもない
さらに、ハーバード大学は、ストレスホルモンであるコルチゾールに注目し、このコルチゾールが白髪に関係あるのでは?という仮説を立てました。コルチゾールは、タンパク質を筋肉 で代謝 したり、脂肪 を分解してくれたりと、人体に必須の働きをしますが、ストレスを受けると脳からの指令 で増えることがわかっています。なので、ストレスホルモンと呼ばれるのです。
一方、コルチゾールは強すぎるストレスにさらされると、分泌機能 が狂い、 濃度が高くなってしまいます。過剰 に分 泌されると、鬱や不眠といった病の原因になることも最近 の研究でわかるようになりました。
ただ、このコルチゾールは白髪とも関係がないことが、ハーバード大学の研究でわかっています。なぜなら、 副腎皮 質をとりのぞいて、コルチゾールを出さないようにしたマウスでも、ストレスを受けると白髪が発生したのです。
交感神経に注目した実験
実験は続きます。ハーバード大学は交感神経に注目しました。その結果、急激なストレスを受けるとメラニンを 作る幹細胞が減少 し、毛 根は5日 で白髪 化してしまうのです。ノルアドレナリンが交感神経によって分泌されますが、メラニンを減少させてしまうのです。
これはどういうことかというと、激しいストレスを受けると、人間の身体は「 闘うか逃 げるか」という原始的なモードになります。
文部科学省『心のケア 総論』
つまり、一種 の興奮 状態になって、それがメラニンの生 成を抑えるということがわかったのです。実験ではストレスを強制的に与えることで幹細胞が消失 し、髪が白くなってしまいます。
2.極度の興奮状態が続くとよくない?

交感神経のスイッチは、 副交感神経との間をいったりきたりしながら、興奮 とリラ ックスを繰り返しています。それが、アドレナリンを 出し続ける状態、つまり交感神経が激しく興奮 するモードになりつづけると、それも極端 に続くと、黒髪の色を供給 するメラニンの生成に影響がでるということです。
交感神経だけが優位になりつづけると、心もボロボロになってきます。さらに、身体にも影響がでて、白髪になってしまいます。しかも、白髪は一度なると戻らないことがわかっています。色素幹細胞の生成は不可 逆であり、再生しないのです。だから、激しいストレスで白髪になったアナウンサーや大統領の髪は、色が元に戻らないということになります。
3.白髪は複合的な要因でなるので、ケアしたいなら髪にトリートメントを

しかし、白髪はストレスだけでなるわけではありません。 複合 的な 要因が 絡んでいます。髪色は 遺伝 と、 加齢 でも 変化 していきます。かなりさまざまな 要素がからむので、 一概 に「食事に大量のごまを取り入れたら 黒髪に 戻った」と、対策 と原因を1対1 にすることは難しいのです。
髪は 傷んだのであればトリートメントするのが効果的ですが、白髪の場合は内部から 損傷していますので、その傷にはトリートメントがなおのこと有効です。公益財団法人高分子学会では、シャンプーとトリートメントによって、傷んだ髪の毛がケアされていくことが科学的に解明されています。
参考『シャンプー・トリートメントによる毛髪の修復機構』
シャンプーとトリートメントは、確実に髪の毛を修復 してくれます。ただ単に汚れを落とすだけでなく、髪の凸凹 に成分が優先的に吸着 し、 縮れをまっすぐにしてくれるのです。なお、これは決して、「直毛が 美しい」という価値 観を 提示 するわけではなく、髪が傷んだ結果としての縮れ毛を意味します。
4.まとめ
ハーバード大学、文部科学 省、高分子学会の調 査を参考 にしながら、免疫やストレスホルモンよりも交感神経に白髪とそのケアに関してのヒントを見てきました。
交感神経の活発化 によるメラニン幹細胞の減少 が白髪を引き起こすということ。また、一度なった白髪は黒く戻りづらいということ。さらに、ストレスは身体を 戦闘 モードにしてしまい、体内から心も体も髪も爪も肌もボロボロになってしまうこと。そして、シャンプーとトリートメントという、基本 的な ヘアケアが大切だということが実験でわかりました。
【本記事の要約】 梅雨時の湿気が強い季節、気分が沈みやすくなる中で、ストレスと白髪の関係についての最新の研究結果が紹介されています。髪の健康を保つには免疫やストレスホルモンだけでなく、交感神経の働きに注目することが重要だという点が、ハーバード大学の実験を通じて明らかになりました。強いストレスにさらされると、交感神経が活発化し、メラニンを生成する幹細胞が減少することで、白髪が発生することが科学的に証明されています。この現象は、激しいストレスにより人間が「戦うか逃げるか」の原始的なモードに入るため、メラニンの生成が抑えられることが原因です。 ストレスによる白髪は免疫やストレスホルモン(コルチゾール)では直接解決できず、一度白髪になった場合、その色を元に戻すことは難しいとされています。特に、激しい興奮状態が続くことで心身に悪影響を与え、髪や爪、肌などの外見的な部分にダメージが現れます。このため、ストレスを軽減しつつ、シャンプーやトリートメントによる基本的なヘアケアが有効とされています。トリートメントは、髪の内部ダメージを補修する役割を果たし、髪の健康を取り戻すサポートをします。 本記事では、交感神経と白髪の関係、ストレスが引き起こす身体的な影響、白髪のケア方法について詳しく述べられており、読者に日常生活の中でのケアの重要性を伝えています。 |